買取トラブル、偽装か否か

自動車買取を依頼したCさんの事例です。30年近くも前に製造された国産のスポーツカー。気に入って購入を決めたのは2年前のことでした。しかし乗りこなすほどの小回りは当然きかず、古い車のため燃費が悪い、修理個所も出てきて維持費もかかるということもあり泣く泣く手放すことを決めました。中古車買取業者に持ち込んだところ、プレミアのある車種だったころもありすぐにでも欲しいというオーナーがいるため買い取りたい、ということで話が進みました。大手中古車買取業者で査定士がいたため、その査定士に古い車だったためエンジンを載せ替えているということを伝えました。そして算出された査定価格は75万円。考えていたよりも高額になり、次の車を購入するための大きな資金にもなると考え、新しいオーナーに大事にしてもらうことを願いながら売却を決断しました。問題が起こったのはその3ヶ月後です。

大手中古車買取業者の本部にある債権回収部門というところの担当者から、「オークションに出品したのだが走行距離数に偽装が認められた。契約は解除とする」というものでした。走行距離数を自分で改ざんした記憶など全くありません。査定にも時間がかかり大手のプロの査定士が適正な価格を出したのではないのかと不満があります。この事案には大きな問題がありました。双方の言い分というのがいつまでも平行線をたどり終結をむかえることは難しいように見られたのです。いくつかの問題点を挙げてみましょう。売買契約書の契約日が空欄となっており双方に確認したところ契約書の交付は買取金額が合意された日ではなく車の引き渡しがされた日の後であったこと。契約条項の中の契約解除に関する部分、とくに「走行距離、修復歴、災害車等契約書表面記載の「車両の状況」欄記載事項と契約車両の間に相違があることが判明した場合、買主(買取店)は直ちに契約を解除できる」となっている箇所について説明は無かったということ。

約30年前に製造された車であり、エンジンも載せ替えるほどの車の走行距離が5万キロ程度であるということは正常に動いていないと考えるべきではなかったかということ。転売先が決まっているような口ぶりでありながらオークションに出品していたということ。このようなことから見ても、一般には明らかに中古車買取業者の不備に思えます。買取を行う上で慎重な査定というのは最も大事なことでありトラブル回避のためにも提示した買取価格には責任を持ってもらいたいものです。しかし本件では実際にその後オークションで再出品をし販売できた価格を差し引いた金額を売り手である相談者が半額負担するという結果になりました。このようにしっかりとした査定を行っていなかった業者が悪いように感じられることでも売り手が泣かなければならない時もあります。そのためにも複数の業者で査定をしてもらうということが大事なのです。